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一級自動車整備士2003年11月【No.07】 |
◆新技術・筒内噴射式ガソリン・エンジン |
問題
筒内噴射式ガソリン・エンジン用のトラップ型リーンNOx触媒の特徴に関する記述として,適切なものは次のうちどれか。
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解説
基礎的事項をおさらいしておきましょう。
酸化あるいは還元は金属と酸素との化学反応を示す呼称です。
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酸化 |
物質が酸素と化合する化学変化のこと。
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還元 |
酸素がとり去られる化学変化のこと。
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窒素酸化物NOxは、窒素原子Nと酸素原子Oが結合して生成される物質の総称のことをいいます。
窒素酸化物には
@一酸化窒素 NO
A二酸化窒素 NO2
B無水亜硝酸 N2O3
C一酸化二窒素 N2O
D四酸化二窒素 N2O4
E無水硝酸 N2O5
F硝酸ミスト HNO3
などの種類があります。
一般的に、窒素酸化物といえば、NO、NO2を指します。
大気中において窒素酸化物が生成される要因は、燃料などが高温で燃焼する際に、空気中に約80%含まれている窒素N2が、大気中の酸素が反応して生成されるものです。
高温燃焼時の熱(thermal)に由来するため thermal NOx と呼びます。
したがって、窒素酸化物NOxは、
NOx=NO+NO2
として取り扱っても問題ないでしょう。
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次に三元触媒(Three Way Catalyst )についておさらいをしておきましょう。
自動車排ガス中の炭化水素HCと一酸化炭素COと窒素酸化物NOxの3物質を酸化・還元反応によって同時に除去するための触媒です。
触媒の活性金属は、白金、パラジウム、ロジウムなどを主成分としています。
この方式では空燃比が14.7の近傍で効率よくHC、CO、NOを除去するが、空燃比がこれより低くなると急激にCO、HCの除去率が落ちます。
このように、ごく狭い範囲の空燃比でしか機能しないという特徴があります。
ご存知のように、ガソリンエンジンは、通常、空気中の酸素がぴったり消費されるだけの燃料を空気と混合して、混合気をエンジンの燃焼室内に入れて燃焼させるのが一般的です。
これをストイキ燃焼(量論燃焼)といいます。
ストイキ燃焼を行うと、三元触媒でNOxとCOと未燃燃料を一気に浄化することができるわけです。
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成層燃焼では、超稀薄燃焼を行うため、三元触媒ではNOxを低減させることはできません。電子制御式EGRで対処しています。
均質リーン燃焼時には、リーンNOx触媒を採用し、NOxをさらに低減しています。 |
トラップ型リーンNOx触媒の反応メカニズム(トヨタ方式といってよいでしょう)と特徴をあげます。
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排ガス中のNOxは酸化雰囲気では貴金属上で酸化され、それに隣接するNOx吸蔵物質と結合して硝酸塩を形成して吸蔵されます。
還元雰囲気および等量点では硝酸塩が分解し、貴金属上で還元ガスと反応してN2に還元されます。
この過程で吸蔵物質はNOxを吸蔵する前の状態に戻ります。 |
原理 |
稀薄燃焼時は、NOx吸蔵物質にNOx(NO2)を蓄える。
理論空燃比運転時は、排気ガス中のCO、HCを利用してNOxを還元する。 |
メリット |
NOxの浄化率が高い。 |
デメリット |
ガソリンに硫黄分が含まれていると急激に劣化する。
NOx還元時は空燃比を濃くする必要がある。 |
短所補完 |
電子制御スロットル・バルブにより、吸入空気量を絞り、一時的に空燃比を濃くして(極短時間の燃料リッチ燃焼;リッチ・スパイク)、還元時の燃料消費を最小化する。
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NOx吸蔵還元型(NOx Storage Reduction)は、NSR触媒ともいわれます。
さてこの問題は難しいと思います。
しかし、今後の環境問題を考えると稀薄燃焼方式は重要な技術です。
(4)通常のガソリン・エンジンに用いられる三元触媒に比べ,NOxの浄化率は低い。
が正解ですが、分かりにくいですね。
三元触媒だけではリーンバーン領域での NOx の浄化率が低下するため, NOx 吸蔵還元型触媒を新たに付加する必要があります。
トラップ型を装着車の場合は、
三元触媒+NSR触媒
と考えていいでしょう。
三元触媒は、必要不可欠です。
今回の問題のポイントは、浄化率が三元触媒とNSR触媒でどっちがよいかということです。
条件は、成層燃焼、均質リーン燃焼、均質燃焼のすべての領域でです。
いうまでもなく、三元触媒の浄化率がNSR触媒に比べて良いでしょう。
ただ、均質リーン燃焼時(空燃比15〜23)に限定した場合の、浄化率の二つの比較はデータがありませんから、わかりません。
ただ、NSR触媒では、制御が難しく予測が外れるとむしろ、浄化率が悪化するという危険性があります。
説明が長くなってしまいました。^0^;
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