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力のモーメントとトルク

トルク・レンチに図のようなアダプタを取り付けて締め付けたとき、トルク・レンチの読みが 65N・mだった。このときのナットの締め付けトルクとして、適切なものは次のうちどれか。
力のモーメントとトルク

65N・m
84.5N・m
130N・m
169N・m







解説

選択肢(2)が適切です。

アダプタで延長した長さ分、少な目のトルクが表示されています。


実際のトルクは表示値より大きくなります。


比で解いて見ましょう。


      

65N・m:0.5m = x :0.61(0.15m+0.5m)


内側同士、外側同士を掛け算すると、


       

0.5 ・ x = 65・0.61/0.5


       

 x = 84.5N・m



力のモーメントとトルク


ここで述べられているものは率直にいうと雑学です。

無視してもよいし気楽に読んでほしい。


荷重計算問題で力のモーメントとかトルクという言葉が使われるが、その意味を少し考えてみたい。

機械の基本的運動や日常的な動作の基本動作は、物体の回転といってよいだろう。


①ふたをあける。ねじをしめる

②自転車のべダルをこぐ

③ハンド・ドリルを回す


物体を回転させるためには、力の作用線が回転軸から離れた力でなければならない。

回転軸から離れているほど、物体を回転させるのに効率がよくなる。


物体を回転させるためには、力の作用線が回転軸から離れた力でなければならない。

回転軸から離れているほど、物体を回転させるのに効率がよくなる。


力のモーメント


式で表すと、

   回転半径a[m]×回転させる向きに働く力F[N]=力のモーメント(トルク)T[N・m]


 

モーメント(moment)の語源をたどると、ラテン語のmomentumに由来するらしい。

意味は「動き」を表し、それが「時間の動き」から「瞬間」というふうな解釈になったというのだ。

モーメントとは、もともと「回転を生じさせる力」あるいは「回転する力のもと」という思いがこめられているようだ。

モーメントは質量による力ではなく、中心から離れるほどか、いかに回転させるかという観点においては、効率がよいかを表しやすいのだ。


 

さて、機械や整備の現場では、この回転力のことを力のモーメントよりもトルク(torque)をもちいる。

どう違うのか。


 

JISの用語に“トルク”という単独の用語はなく、「締付けトルク」、「定格トルク」のように他の単語と組み合わせた用語になっている。

トルクは、力学的には、図に示すように回転軸まわりの力のモーメントT=F・aのことであり、機械設計の分野でこれを“トルク”と称する。

私たちの周りには、“トルクを加えられて動くもの”と“トルクを発生するもの”がある。

前者は、機械装置の機構やラジオの回転ボリューム、ドアノブなどだ。

後者は、アクチュエータで具体的には、モータ、エンジン、人間などである。



一つの結論として、力のモーメントは、力の釣合いという静的な状態で、物体の運動を議論するに適するようだ。

それに対し、トルクは装置を動かすという動的な状態で、物体の運動を説明するのに用いられているようだ。


ついでながら、トルクの語源をたどると、ちょっと厄介だ。


 

フランス語の亀(tortue)はもともとラテン語で奇怪な動物を意味するtartarucaから発達して出来た言葉で、この言葉の源をさらに遡れば、冥界を司るギリシャ神”タルタロス(Tartarus)に行き着く。


 

TartarusのTar-は、英語のtort(不正)と同じ語源で、印欧祖語(ヨーロッパ・インドで使われている言語のおおもとと考えられている言葉)で”まがる、ひねる”という意味の*terk(印欧祖語は仮説上の言語なので、想像上の形を意味する*をつけます)がもとになっている。

タルタロスも、もとをたどれば”異形”という意味になる。


同じく*terkをもとにする言葉にはtwist(ひねる)、torch(たいまつ-形がひんまがっている)”、torment(苦痛-もともとは拷問という意味で体がねじまがる)、エンジンのトルク、トルクレンチのtorqueがある。


モーメントは「回転せしめる力のもと」という概念があり、トルクは「ひねる」という、真っ直ぐに対して、異端の意味を匂わせるものがある。

モーメントにまつわる用語は理学・工学(N次モーメント、双極子モーメント、地磁気双極子モーメントetc.)によく登場するものですこし考えてみた次第であります。

たいしたお役にたてませんでした。

余計なことをかたりすみませんでした。


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