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不凍液(エチレングリコール)
冷却水が一番凍結しにくい(凍結温度が最低になる)ときの不凍液の混合割合として,適切なものは次のうちどれか
解説
二級からの出題です。
正解は(3)です。
受験テクニック上は、答えを丸暗記した方が良い。
以下は興味がある場合のみにして頂ければと存じます。
ここから少し説明が長くなりますが、物理化学的にLLC濃度を計算してみます。
簡単な問題で凝固点降下問題を考えてみましょう。
ラジエータが凍ると冷却水が氷になって膨張し、装置を壊してしましますので、凍る温度を下げるように化学的に施します。
一言でいえばエチレングリコールは、凝固点降下剤です。
問題
水100[g]のエチレングリコールC2H6O2を43[g]溶かした不凍液は何度で凝固しますか。
解答
水のように他の物質を溶かす液体を溶媒といいます。
エチレングリコールのように溶け込んだ物質を溶質と言います。
溶解によって生じた均一な液体混合物を溶液と言います。
希薄溶液を冷却していくと、ある温度で溶液中から溶媒が先に凝固しはじめます。
このときの温度をその溶液の凝固点[℃]といい、純溶媒の凝固点より低くなります。
このような現象を溶液の凝固点降下といいます。
純溶媒と溶液との凝固点の差を⊿tと表し、凝固点降下度といいます。
⊿tは、溶液の質量モル濃度m[mol/kg]に比例しますので、次のような式で表すことができます。
⊿t=kf×m ……①
kfは、モル凝固点降下と呼ばれる定数で、1[mol/kg]の溶液の凝固点降下度を表し各溶媒によってそれぞれ固有の値をもっています。
水のデータを以下に示します。
純溶媒の凝固点とモル凝固点降下kf |
||
溶媒 |
凝固点[℃] |
kf |
水 |
0 |
1.85 |
質量モル濃度m[mol/kg]は、溶媒1[kg]あたりに溶けている溶質の物質量[mol]で表す濃度です。
質量モル濃度m[mol/kg]= | 溶質の物質量[mol] 溶媒の質量[kg] |
…② |
質量[g]、分子量、molの関係は、以下の通りです。
g |
|
分子量 |
mol |
C2H6O2の分子量はC=12、H=1、O=16ですから、62となります。
これを上の関係式を使いmol換算しますと
43[g] 62[g/mol] |
=0.694[mol] |
②式より、100[g]は0.1[kg]ですから、
0.694[mol] 100[g] |
=6.94[mol/kg] |
①式より、
1.85×6.94=12.8
したがって-12.8[℃]で凝固することにまります。
LLC濃度は、43/(100+43) ×100 =30[%]
です。
あるい意味、これまでの計算は近似計算です。
というのは、実際の凝固曲線は、①式のように簡単には説明が付きません。
上の図は、水は0℃で凍っています。
40%濃度で-20℃で氷、
60%濃度で、-50℃で凍るが、
80%濃度で、-45℃と温度が上昇し、凍っています。
100%濃度で、-9℃に見えます。
これらを書き直したのが、濃度と凍結温度の関係として教科書(二級自動車整備士・エンジン編)に書かれています。
とくに書きたかったこと、エチレングリコールは、自動車以外にも、様々な冷却装置に用いられていますが、毒物だという事です。
取扱いには、MSDSを注意深く読んで気を付けて頂きたいと思います。
うっかりラジエータ・キャップを外しっぱなしにしたら、猫が甘いエチレングリコールを飲んで死んだりします。
油断も隙もあったもんじゃありません。
古い車から漏れ出した甘いエチレングリコールを犬や猫がなめたりするようです。
エチレングリコール(ethylene glycol)の名称に関してですが、グリコはグルコース(ブドウ糖)のグルコと同じく、ギリシャ語のグルコ「甘い」で、オールはアルコールという意味でつけられた名前で、IUPAC命名では1,2-エタンジオールです。
甘いアルコール という意味のグリコール(glycol)が用いられています。
エチレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールは甘い味がします。
最後になりますが、水道水に加えたエチレングリコールは水の沸点を上げることになり、それ自身も水より気化しづらいので、夏には都合がよくなります(①に似た沸点上昇度の観点から)。
このようにエチレングリコールは、冬にも夏にも冷却装置には便利で安価でよい物質ですが、取扱いに注意しなければならないことを忘れてはいけません。
自動車整備士の化学問題
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