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複数条件の場合はキーワードの間にスペースを入れてください。2級ガソリン自動車整備士・試験問題
2G 登録試験 2025年10月 問題23
解説
(1)プライマリ・プーリの油圧室に掛かる油圧が高くなると、プライマリ・プーリに掛かるスチール・ベルトの接触半径は小さくなる。
選択肢(1)は、不適切です。
正しくは以下の通りです。
プライマリ・プーリに掛かる作動油圧が高いときは、プライマリ・プーリの溝幅が狭くなるため、プライマリ・プーリに掛かるスチール・ベルトの接触半径は大きくなる。
(2)スチール・ベルトは、エレメントの伸張作用(エレメントの引っ張り)によって動力が伝達される。
選択肢(2)も不適切です。
正しくは以下の通りです。
スチール・ベルトは、エレメントの圧縮作用(エレメントの押し出し)によって動力が伝達されている。
(3)プーリ比が大きい (Low 側)ときは、 プライマリ・プーリの油圧室に掛かる油圧が低くなり、 プライマリ・プーリの溝幅は広くなる。
選択肢(3)が適切です。
CVT(ベルト式無段変速機)において、プーリ比が大きい(Low側/発進時など)状態の動作は以下のようになります。
- プライマリ・プーリ(入力側): 油圧室の油圧を低くし、溝幅を広くします。これによりベルトの巻き付け径が小さくなります。
- セカンダリ・プーリ(出力側): 油圧(またはスプリング)によって溝幅を狭くし、ベルトの巻き付け径を大きくします。
この「入力側が小径、出力側が大径」という状態が、マニュアル車の1速に近いLow(低速・高トルク)の状態を作り出します。
逆に高速走行時(High側)は、プライマリ側の油圧を高めて溝幅を狭くし、巻き付け径を大きくします。
(4)Lレンジ時は、変速領域をプーリ比の最 High 付近にのみ制限することで、強力な駆動力及びエンジンブレーキを確保する。
選択肢(4)は、不適切です。
正しくは以下の通りです。
Lレンジ時は、変速領域をプーリ比の最Low付近にのみ制限することで、強力な駆動力及びエンジン・ブレーキを確保する。
<参考>
スチール・ベルトを用いたCVT(連続可変トランスミッション)は、一対の可変プーリ(プライマリ・プーリとセカンダリ・プーリ)にスチール・ベルトを巻き付け、プーリの溝幅を油圧で変化させることにより、変速比(プーリ比)を無段階に連続的に変える機構です。
これにより、変速ショックのない滑らかな加速と、エンジンが最も効率の良い回転数で運転できる状態を保ちやすくなります。
変速の仕組み
変速は、主にプライマリ・プーリ(エンジン側)とセカンダリ・プーリ(車輪側)それぞれの溝幅を油圧で制御することで行われます。
- プーリ比の定義:
$$\text{変速比(プーリ比)} = \frac{\text{セカンダリ・プーリのベルト接触半径}}{\text{プライマリ・プーリのベルト接触半径}}$$ 変速比が大きい(Low側)ほど、加速力が増します。 - 変速比を大きくする(Low側へ):
- プライマリ・プーリの油圧室に掛かる油圧が低くなり、プーリの溝幅が広くなります。結果、スチール・ベルトの接触半径は小さくなります。
- セカンダリ・プーリの油圧が高まり、溝幅が狭くなり、スチール・ベルトの接触半径は大きくなります。
- プライマリの半径が小さく、セカンダリの半径が大きくなることで、変速比は大きくなり(Low側)、強力な駆動力が得られます。
- 変速比を小さくする(High側へ):
- プライマリ・プーリの油圧室に掛かる油圧が高くなり、プーリの溝幅が狭くなります。結果、スチール・ベルトの接触半径は大きくなります。
- セカンダリ・プーリの油圧が低くなり、溝幅が広くなり、スチール・ベルトの接触半径は小さくなります。
- プライマリの半径が大きく、セカンダリの半径が小さくなることで、変速比は小さくなり(High側)、高速走行に適した状態になります。
動力伝達の方式
- スチール・ベルトは、複数のエレメントと呼ばれる金属のコマを、2組のスチール・バンドで拘束した構造をしています。
- 動力は、プーリのV溝の傾斜面と、エレメントの側面との間の摩擦力によって伝達されます。
- この伝達は、エレメントが前のエレメントを押し出すという圧縮作用(プッシュ式)によって行われるのが特徴です。ベルトがプーリに引き込まれる際の張力ではなく、プーリによってエレメントが押し付けられる力によって、動力が伝えられます。
Lレンジ(ローレンジ)の制御
Lレンジは、シフトレバーの操作によって選択されるモードで、その目的は、強力な駆動力と強力なエンジン・ブレーキを確保することです。
- 制御の特長:
Lレンジでは、CVTの変速領域がプーリ比の「最Low付近」にのみ制限されます。 - 変速比の維持:
運転状況(アクセル開度、車速など)にかかわらず、CVTは可能な限り変速比を大きく(Low側)保つように制御されます。- これにより、発進時や急な登坂路などで必要な大きなトルク(駆動力)を確保します。
- エンジン・ブレーキ: 下り坂などでアクセルを離すと、CVTは高い変速比(Low側)を維持するため、エンジン回転数が高くなり、強力なエンジン・ブレーキが作用します。
- この制御により、フットブレーキの使用を減らし、フェード現象を防ぎ、安全性を高めます。
最近のCVTでは、Lレンジの代わりに「B(ブレーキ)レンジ」や、手動でギアを選択するような「マニュアルモード」の一部としてLow側の変速比が固定・維持されることもあります。
Lレンジに入れることで、CVTが電子制御により自動でLow側の変速比を維持し、強力な減速力を得られる仕組みになっています。